強制履行

 債務不履行の場合に、債権者が裁判所の力を借りて強制的に債務の内容を実現すること。強制履行の方法には、次の四種がある。
@直接強制 債務者の意思を問わず、強制執行によって直接に債務の内容を実現する方法。与える債務(たとえば、Aの所有家屋をBに引き渡す債務)についてのみ認められ、為す債務(たとえば、ある場所でピアノを演奏するという債務)については許されない。
A間接強制 裁判所が債務者に対し、損害賠償などを命じることによって心理的に圧迫し、その結果、強制的に履行させようとする方法。これは、直接強制や代替執行のできない場合にのみ許される。
B代替執行 債務の内容の実現を第三者に行わせ、その費用を債務者に負担させる方法(たとえば、Aが前金を得て壁を塗装する債務を負っているのにそれを履行しない場合に、Bに塗装をさせ、その費用をAに負担させること)。為す債務のうち第三者が代わっても目的を達成できる行為についてだけ認められる。
C意思表示義務の執行 意思表示を目的とする債務について、そのような意思表じをせよという判決をもって、現実にその履行があったものとする方法(たとえば、農地を売買した者が許可申請をしない場合に、申請を命じた判決書を添付すれば、その譲渡人の申請があったのと同じ効力が生じる)。

契約の解除

 契約当事者の一方の意思表示によって、契約関係をさかのぼって消滅させることをいう。
 契約関係が初めからなかったと同様の法律効果を生じさせるという点で、継続的な契約関係(賃貸借・雇傭・委任など)を終了させて将来に向けて解消する解約(告知)とは区別される。
 解除ができる権利は、契約によって生じる(約定解除権)ほか、法律の規定によっても生じる(法定解除権)。
 まず法定解除権だが、その中でも重要なのは債権不履行を理由とする解除で、これは民法541条から543条に規定されている。
 これによると履行遅滞の場合には、相当の出会い期間を定めて請求し、相手方がなおその期間内に履行しないときでなければ解除できない。
 法定解除において、解除の意思表示がなされると、契約が初めからなかったと同じような効果が生じることになる。これによってまだ履行していない債務は消滅するし、すでに履行したものについては原状回復義務が生じる。
 法定解除の効果としてもう一つ大切なことは、債務不履行について責任ある者は、損害賠償義務を負うことである。
 次に約定解除権だが、これは当事者の出会い系契約によって生じる解除権で、これについては民法上一般的な規定はない。約定解除は原状回復義務が生じる点では、法定解除権を行使した場合と同じである。が、その効果が当事者の合意によって発生するという点で、解除権者の単独行為による法定解除とは異なる。
 売買取引において解除手付がなされることがあり、これは契約の解除を保留しておく取引きである。しかし、この解約手付に限らず、契約当事者は解除原因を自由に約定することができる。